東京地方裁判所 昭和40年(ワ)2942号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕一、(事故の発生)
原告主張の日時場所で、被告大塚運転の被告車が原告に接触したことは当事者間に争いがなく、<証拠>によると、原告が右事故により頭部打撲傷、脳震盪、右大腿骨々打(両端部)、右肩胛部打撲傷、右鎖骨々折、胸部打撲傷、肋骨々折、顔面打撲擦週傷(数ケ所)、両手背部打撲擦過傷の傷害を受けたことが認められ、他に右認定を左右する証拠はない。
二、(責任原因)
<証拠>を総合すると、被告大塚は原告主張の日時ごろ空車である被告車を運転し時速約五〇粁の速度で九段下方面から駿河台下方面に向かつて進行し、本件交差点に差しかかつたところ折よく進行方向の信号が「青」を示していたので、そのままの速度で前方および左右に対する充分な注意を払うことなく交差点内に進入し、ほぼその中央を過ぎた地点まで至つた際突然左前方約一六、七米の横断歩道わきのガードレールのところから原告が自己の進路前方を横切るように駈け出してきたため、直ちに急ブレーキをかけるとともにハンドルを右に切つたが間に合わず、自車車体前部バンバー、左端附近を原告に接触させ、原告を路上に転倒させるに至つたものであることが認められる。
<証拠判断>
しかも前掲各証拠によれば、原告が被告車の進路前方にとび出した際、被告車の進路右前方にある都電安全地帯には新宿発両国行の都電が一輛停車し、客が乗降中であつたことが認められ、他に右認定を左右する証拠はない。
そうだとすれば、被告大塚としては自己の進行方向の信号が「青」を示していたとしても、道路交通法第三一条により徐行をするとともに左右および前方に対して充分な注意を払いつつ進行すべき注意義務があり、それにも拘らず制限速度を超えた毎時約五〇粁の速度で、左右および前方に対する充分な注意を払わず進行した点に過失があり、信号を無視し安全を確認せずに車道上にとび出した原告の過失もさることながら、被告大塚の右過失が本件事故の一因を成しているものと認めざるをえない。
四、(過失相殺)
本件事故の発生につき原告自身にも過失が存在することは前記認定のとおりである。
<中略>
以上要するに、本件における原告の過失は信号を無視し右方の安全を確認せずに本件交差点を横断しようとしたことにあり、またそれに尽きるものというべきである。しかしながら、右の過失は重大であり、これを考慮するならば被告らに責を負わすべき損害額は前記三、の治療費等損害合計金五〇九、五六一円中その四割弱に当る金二〇三、〇〇〇円、同じく俸給・退職金等損害合計金四、八〇七、〇五〇円中その四割弱に当る金一、九二〇、〇〇〇円が相当と認められる。(小川昭二郎)